コロンビアの洪水・土石流
1.発生日
2006年1月から5月(第1雨期)
2.気象状況
太平洋から注ぐ冷風によって第1雨期の始まりが例年よりも早まり、1月2日から雨が降り始めた。1) 3月初めからは降雨量が増大し、甚大な被害をもたらした。2)
図−1に3月21日から23日にかけてのGFASによる降雨デ−タを示す。左上の赤色の部分が今回のコロンビアでの集中豪雨を表している。
3.災害発生経緯および被災状況
2006年1月2日から雨は降り続き、6月1日までに、127人が亡くなり、222人が負傷、21人が行方不明となり、196,895人(41,302家族)が影響を被った。被災は26州内の286市町村に及び、およそ1,337家屋が倒壊し、14,183家屋が損傷を受けるなど、2006年第1雨期だけで、過去7年間で死者数において過去最悪となる自然災害を被った。3)
2006年第1雨期(1月 1日から5月 8日まで)に発生した自然災害の内訳を表−1に示す。4) また、1月 から5月までの間に発令された警戒レベルとその対象となった地域の一覧を表−2に10) 、位置図を図−2に示す。
表−1.2006年第1雨期(1月 1日から5月 8日まで)の自然災害発生件数4)
自然災害区分 |
発生件数 |
参考・過去の自然災害 |
|
2004年 |
2005年 |
||
土石流 洪水 雪崩 暴風雨 |
120 157 9 29 |
22 64 5 26 |
39 122 11 34 |
合 計 |
315 |
117 |
206 |
表−2.2006年第1雨期(1月 から5月まで)の警戒レベルと対象地域10)
警戒レベル |
対 象 地 域 |
レッド
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サンタンデル州のバラランカベルメハからボリ-バル州のカラマ-ルまでのマグダレナ川沿い、アンティオキュア州カウカシアからラ・モハナを含むマグダレナ川との合流点までのカウカ川沿い、カルタ州ラ・ドルナダ地区内の市町村で、サンタンデル州のウイルチ港、パラ港とバランカメルヘハ;アンティオキュア州のベリオ港、リサラルダ州のマルセジャとデスケブラダ、クンディナマルカ州のウバテ、首都圏内のボゴタ川 |
オレンジ
|
クンディナマルカ州のサルガル港からサンタンデル州バランカベルメハまでのマグダレナ川沿い; サンタンデル州のシミタラ市間、アンティオキュア州ラ・ピンタダとシゴロド間、バジェ州アルジェリアとブエナベントゥラ間、カルダ州ノルマトとリサラルダ州ラ・バ-ジニア、ボジャカ州全域 |
イエロ−
|
サンタンデル州ブカラマンガ、アンティオキュア州メディリン首都圏、メタ州のプエルト・ロペス、ビジャビセンシオ、キュバラル、カスティ-ジョ、グアマルの市町村からメタ川沿い;バジェ州のラ・ウニオン、エル・アグイラ、トゥルア、パルミラ、エル・セリト、ブガとシネブラ;リサラルダ州のサンタ・ロサ、ペレイラとミストラト;オカ-ニャ、チブ、エル・ス-リア、プエルト・サンタンデル、エラン、ビジャ・デル・ロサリオ、北サンタンデル州のタチラとククタ、アトランチコ州のカンポ・デ・ラ・クルス、スアン、サンタ・ルシアとマランボ、クンディナマルカ州とリオ・トゥンフエリトのラ・メサとトカイマ |
レッド警戒レベル:川の高水水位と連続降雨により人口集中地域が洪水に直面している状況。
* オレンジ警戒レベル:川の水位上昇と連続降雨により、人口集中地域が洪水にあうリスクがかなり高い状況。9)
** イエロ-警戒レベル:連続集中降雨により、数日間あるいは数週間以内に、河川が洪水で氾濫する可能性がある状況。9)
1月から5月までに発生した主な災害は、以下のとおり。
・3月18日午後、14人のボ-イスカウトがカルダ州(Caldas)のマニサレ町 (Manizales)の近くでハイキングしていたところ、洪水に見舞われ、11歳から16歳の少年11人が死亡した。5)
なお、アンティオキア(Antioquia)州、トリマ(Tolima)州、リサラルダ(Risaraida)州、カルダ(Caldas)州、ナリノ(Nalino)州では3月24日まで数日間にわたって洪水が続き、5州全体で、32人が死亡し、30人が負傷した他、数百人が家を失った。リサライダ(Risaralda)州の州都ペレイラ(Pereira)では3軒の家屋が流出した他、キンディオ州(Quindio)の州都アルメニア (Armenia)に通じる主要道路が通行不能となった。 6)
・4月12日、バジェ・デル・カウカ(Valle Del Cauca)州を流れるダグア(Dagua)川の流量が雨で増水したことで、コロンビア西部のカリ(Cali)市とブエナベンツラ(Buenaventura)市を結ぶ高速道路が大規模な土石流に見舞われた。7) 33人が死亡、8人が行方不明となり、61家屋が破壊され、約300人が陸軍のヘリコプタ-でブエナベンツラ市に避難した。被災地には1,000人から1,200人が生活していたが、内、約700人が家を失った。8) 復旧には、1,700万米ドルほどかかる見込み。7)
なお、参考までに、2005年10月から12月まで続いた第2雨期においても、244市町村の474,493人(98,718家族)が影響を被り、94人が亡くなり、114人が負傷し、7人が行方不明となった他、2,232家屋が倒壊し、21,173家屋が被害を受けた。1)
3.救援・支援状況
3.1. 救援状況
現地での救援状況をまとめると以下のとおりである。
・3月30日までに、コロンビア赤十字は115人のボランティア、16人のスタッフ、9台の救急車、14台の車両、1台のトラックにより人道的支援を行うとともに、オレンジ警戒レベルとなった16州に救援チ-ムを配備。2)
・5月22日までに、コロンビア赤十字からの700人のボランティア、80人のスタッフが後方支援、情報伝達網の管理などの支援活動に従事。政府のもとで、国際赤十字の汎アメリカ地域災害対応ユニットはコロンビア赤十字と一緒になって状況を監視している他、地域の調停チ−ムが救援活動を支援している。10)
3.2. 支援状況
今回の洪水・土石流に対するコロンビア国内機関および国際機関等の一連の支援状況をまとめると以下のとおりである。
なお、コロンビア政府は今回の洪水・土石流に対し、国際機関等への支援を要請していないものの、1)国際機関等は支援を行っている。8)
(コロンビア国内機関)
(4月5日)
・カリ(Cali)市役所では、堤防近くで生活していて、被災した119家族に対し、食料を配給するとともに、3,200人を収容できる避難所を設置した。さらに、国と市役所は、一家族につき450,000ペソを3ヶ月間貸与。トルヒ-ジョ(Trujillo)市では70人の子供達を避難所に収容した。1)
(4月20日)
・政府はバジェ・デル・カウカ州に市民緊急事態を宣言し、土石流等で家が破壊されたか、放棄せざるを得なかった家族に対し、月およそ87米ドルずつ6ヶ月間にわたり貸与すると共に、地方自治体が安全な場所に家を新築することを支援するとした。8)
・バジェ・デル・カウカ州政府は、被災家族の移住と堤防補強のために予備費より435,000米ドルを支出するとともに、人道的支援のため、さらに130,000米ドルを支給することとし、ハリ-ジョンで被災した人たちにお金を貸し出し始めた。8)
・災害防御・警報の地域委員会と地区委員会は、カリ市ラ・プライタ地域の38家族に対し食料とマットレスを配給した。8)
(5月22日)
・コロンビア赤十字は、5,000家族(全被災家族の14%)を支援するとして、地方政府と国家災害準備救援機構(SNPAD:the National Disaster Preparedness and Response System)の協力のもと、これまでにおよそ1,546家族(およそ7,700人)に対し、食料その他の救援物資を配布した。さらにおよそ2,000家族がコロンビア赤十字より直に支援を受けた。コロンビア赤十字は、さらなる2,000家族を支援するため災害救助緊急基金からの資金援助を要請。10)
(5月25日)
・国家災害準備救援機構(SNPAD)は、ス-クレ州、ボリ-バル州、コルドバ州の40,000人に対し、食料品その他の配布を始めた。3)
(国際機関等)
・4月20日、イタリア政府は国連住居調整官の事務所を通じて、コロンビア赤十字に対し100,000米ドルを支援することを表明。8)
・5月23日、アメリカ合衆国・国際開発庁(USAID)はアメリカ赤十字を通じて、コロンビア赤十字の活動に対し50,000米ドルを支援。国際赤十字は、さらなる1,000家族を支援するためコロンビア赤十字に対し災害救助緊急基金より資金援助するとともに、事態を引き続き監視。4)
4.被害状況等写真
被災者の救援状況
1) http://edition.cnn.com/2006/WORLD/americas/04/14/colombia.mudslides.ap/index.html
2) http://www.alertnet.org/thenews/pictures/BOG03D.htm
洪水による被災状況
3) http://edition.cnn.com/2006/WORLD/americas/04/15/colombia.mudslides.ap/index.html
4) http://www.alertnet.org/thenews/pictures/CAL04D.htm
土石流による被災状況
5) http://www.alertnet.org/thenews/pictures/BOG01D..htm
6) http://www.alertnet.org/thenews/pictures/CAL03D.htm
引用文献
1) http://ochaonline.un.org/DocView.asp?DocID=4404
2) http://www.ifrc.org/cgi/pdf_appeals.pl?rpts06/colvolfl1.pdf
3) http://ochaonline.un.org/DocView.asp?DocID=4647
4) http://ochaonline.un.org/DocView.asp?DocID=4617
5) http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/N20244714.htm
6) http://news3.xinhuanet.com/english/2006-03/25/content_4343866.htm
7) http://news3.xinhuanet.com/english/2006-04/18/content_4440148.htm
8) http://www.reliefweb.int/rw/RWB.NSF/db900SID/LSGZ-6P2FTF?OpenDocument&rc=2&cc=col
9) http://ochaonline.un.org/DocView.asp?DocID=4553
10)http://www.ifrc.org/cgi/pdf_appeals.pl?rpts06/MDRCO001.pdf
図−1 GFASによる南アメリカ北西部の3月21日〜23日までの3日間累積降雨量デ−タ
図−2 洪水・土石流が発生したコロンビア北西部の位置図